リフレクションについてまとめてみた。ハピペンです。
先にイメージがあった方がいいので、リフレクションのうち「エピソード記述」を紹介します。リフレクションってこんなもんでもいいのかというたたきにしてもらえたらと思います。
参考:ハピペンのエピソード記述
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このようなリフレクションから、もっと深いリフレクションを試みるための情報をまとめてみたのです。
前提
教育現場・学校では、子どもとのかかわりのすべてに「教育的価値」を意図したかかわりという前提がある。
教育現場では「教育的な根拠」と関係なく、無作法に好き勝手に思い込みやオリジナリティのみで子どもと過ごしていればいいわけではない
そして、前提となる「教育的価値」というのは、いわゆる「ねらい」である。
しかし、教育のほとんどは対人間によって行われ、コミュニケーションを介したものである。しかし、コミュニケーションは、相手によって常に内容が変化する。だから、こちらがどんなに「ねらい」を達成するために状況に応じてコミュニケーションをしたとしても、「ねらい」が達成できるかは全く分からない。
だから、我々が行った「かかわり、コミュニケーション、振る舞い」を「リフレクション(内省・省察)」することで、より「ねらい」に向かって「行為の枠組みを変える」ことができる可能性がある。そして、リフレクションがそれをもたらす可能性は高い。
短絡的に言ってしまえば、我々が「行為の枠組み」を変えることによって、より「人格の完成、平和で民主的な国家及び社会の形成者として必要な資質を備えた心身ともに健康な国民の育成」「自己実現と社会参画」「自立と社会参加」に近づけるように、我々の「教育活動(かかわり・コミュニケーション・振る舞い)」を変えるってことだ*1。
じゃあ、「どうやって何を『リフレクション』すればいいの?」というのが、今回の【まとめ】。
ALACTモデル
大きな枠組みが「ALACTモデル」で、その項目ごとの具体的な視点や考え方がある。
ALACTモデルは、
- 行為
- 行為の振り返り
- 本質的な諸相への気付き
- 行為の選択肢の拡大
- 試行
のステップでリフレクションが行われる。
それぞれのステップを説明していき、順に辿ればリフレクションができるようにしたい。
ステップ1 行為
これは、もう「して」という感じ(むしろ「していない」という状態はないかもしれない。何でも考えてみれば「している」と考えられるだろう)。
その後の「振り返り」で、思い出される「ある場面」における「見たこと・聞いたこと(観察)」と「どうかかわったか、コミュニケーションしたか、振る舞ったか(関与)」を通じた「感じたこと、気づいたこと、思ったこと(省察)」から「分かること(意味・価値)」が重要なのだと思う。
本当はこうした「行為」の最中に「観察」と「関与」があるのだと思う。
研究であれば、その手練れさは、必要だと思う。しかし、日々の実践的なリフレクションのためには、とりあえず「して(みて)」、そして後から振り返ってみようというのが妥当かと思う。
「行為」に関しては、こちらなりの主観から来る「ねらい」をもって「して」というしかない。
★「ステップ1」の「行為」では
・何を達成したかったのか?
・特に何に注意したかったのか?
・何を試してみたかったのか?
引用:http://www.nakahara-lab.net/2011/10/post_1802.html
が含まれている。
※「行為」への支援
「行為」をよりよいものにする支援として「有益な経験を見い出す支援」が考えられます。有益な経験(行為)を見いだすための思い浮かぶ限りの手助けによって、「行為」が豊かになるということです。
参考:http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED266102.pdf P8
ステップ2 行為の振り返り
次に「行為」の振り返りを行います。
「行為」の「受容、共感、具体化」のための「8つの質問+1」が示されています。
8つの質問
《自分軸》
doing:自分は何をしていたのか?
tihinking:自分は何を考えていたのか?
feeling:自分はどんな感情をもっていたのか?
wanting:自分は何をしたいのか?
《相手軸》
doing:相手は何をしていたのか?
tihinking:相手は何を考えていたのか?
feeling:相手はどんな感情をもっていたのか?
wanting:相手は何をしたいのか?
参考:http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/11/post_2296.html
これを基に「行為」に含まれていた「内実のようなもの」(「内実=本当のところ」なので、「内実のようなもの=そのときに本当のところだと思ったもの」)を引き出します。
この8つの質問の中で、特に「感情」のズレや不一致が、意図的な思考の揺さぶりにつながり重要だそうです。
この日常の中に様々な行為がある中で、そのときに振り返る「行為(最初に思い浮かぶ出来事)」というのは、いくつもある事象の中の「ある行為」に特定されていると思います。
その「行為」が思い浮かぶ理由として、その行為が何かしらの「琴線」に触れているからその「行為」が想起されたと捉えることができます。
(他に、たくさん行為を書き出して選び抜く方法もあります。)
「エピソード記述」的には、「ある行為」を選んだということは、そこに「感動や違和感、自分の心が揺さぶられた」という可能性が高いのです。
(重要)「ある行為」が浮かんで、選べるということは、そこにもう「メタ」な省察があると考えられます。「行為」を選んでから「省察」するのではなく、それが心のどこかで「省察」していてその価値に気づいているから「行為」を取り上げることができるということです。
+1
その「行為」の映像が読み手に伝わるような「背景」があることで、深い省察につながります。これは「エピソード記述」でも何度も言われていいます。
context:背景・状況・前後関係
それはどんな文脈で起こったのか、これからどんな文脈につながっていくのか。
ただの情景描写をする必要はないのですが、「客観的な事実」と「場所」と「どんな風に感じる雰囲気なのか」、などを背景に盛り込めるとよい。
参考:社会科教育カリキュラム・デザインの理論と方法: コルトハーヘンのALACTと8+1の窓
そして、「その行為を選んだのはどうしてだろう?」と探っていくのが次の「3.本質的諸相への気づき」のステップです。
★「ステップ2」の「行為の振り返り」では
・具体的な出来事はどういうものだったのでしょうか?
・何がしたかったのか?
・何を思ったのか?
・どう感じたのか?
・生徒達は何をしたくて、何をしていて、何を思い、何を感じていたのだと思いますか?
引用:http://www.nakahara-lab.net/2011/10/post_1802.html
が含まれている。これに関しては、すでに上で紹介したものと同じですね。
※「行為の振り返り」への支援
「行為の振り返り」をよりよいものにするためには「受容、共感、誠実、具体性」などの支援が良いとされています。行為を振り返っている人に対して、また自分自身が行為の振り返りの中で「受容、共感、誠実、具体性」を意識することで、行為の振り返りの質が上がるということです。
参考:http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED266102.pdf P8
ステップ3 本質的な諸相への気づき
ステップ3が一番の「肝」で重要!
その「行為」に何が含まれているかを解剖していくようなイメージです。掘れば堀っただけ、見つけ出せるものがある。そして、その掘るための道具が「己の人間性」というところが非常に面白い。
単に加齢とともに経験が豊かになればエピソードやメタ観察が書けるようになるというほど単純ではありません。(中略)若い人でも、人と丁寧に付き合う構えをもち、相手を主体として尊重しつつ、しかし自分も一人の主体であるということを相手に伝えていくようにしている人は、おそらくさまざまな人と関わる中で、いろいろな気づきを得、それを「豊かな背景」に溜め込んでいけるでしょう。(中略)そして、そのような人がエピソードを描けば、やはりなるほどと人に思わせるものが描けるのです。
エピソード記述入門―実践と質的研究のために P201
「エピソード記述」においては、立場が定まっていないとエピソードが描けないと書かれていました。ただし、その立場が自分で認識できていないだけで、振り返りたい「行為」を浮かべることができるように、すでにその芽は己の中にあると言えます。
その立場や価値観にどうすれば気づけるのかが非常に大切です。その価値観が「コア・クオリティ(クオリティ=質)」と言わているものだと考えられます。
そのサポートツールを「コルトハーヘン」さんは、ちゃんと用意されています。
それが「玉ねぎモデル」です。
玉ねぎモデル
参考:http://www.ritsumei.ac.jp/kyoshoku/kankobutu/kiyou/202araki.pdf
上手くこの項目たちを行き来して、埋めていくことができたら、コア・クオリティに近づける可能性がある。
- 環境:私は何に遭遇しているのか
- 行為:私は何をしているのか
- 能力:私にできることは何か
- 信念:私は何を信じているのか
- アイデンティティ:私は何者か
- ミッション:私を駆り立てるもの
- コア・クオリティ:核となる質(価値観)
ちなみに、「核となる善さ」にまで届いている「リフレクション」を「コア・リフレクション」というらしい。「コア・クオリティ」は「ポジティブ」なものが望ましいと「コルトハーヘン」さんは言っているとここに「http://www.nakahara-lab.net/blog/2014/11/post_2296.html書かれていました。
「本質的な諸相への気づき」は「コア・リフレクション」であると良いということです。
一方で、「不一致」をもとに「価値観」に気づく道もあります。
- 「考えていること」と「感じていること」のギャップ
- 「自己イメージ」と「他者から見た自身のイメージ」とのギャップ
- 「自分として生きる中で体験して知っている自己」と「他者に表現して伝わる自己」とのギャップ
- 「していると言っていること」と「実際にしていること」とのギャップ
- 「今の自分」と「なりたい自分」とのギャップ
- 「言葉にしていること」と「言葉にしない行動」とのギャップ
参考:未来を創るリフレクションの力 F・コルトハーヘン氏のリフレクション学スペシャルワークショップに参加して - Learning journey - ラーニングジャーニー | MIKA KUMAHIRA
「大文字のTheory」と「小文字のtheory」
「3.本質的な諸相の気づき」の中で、「大文字のTheory(学術的知識)」と「小文字のtheory(実践知)」の結びつきを見つけることもより深い省察には必要になってきます。
「エピソード記述」で言及されていることに気をつけて、理論と実践を結び付けていきます。客観と主観のバランスを取るイメージです。主観的な省察なのだが、客観的な理論も踏まえているような。
「主体としての実践知」と「客体としての学術的知識」の結合部を探っていく(単に理論と実践でもある)。
(ちょっとこれは、はっきりとはまだ分からないのだけれど「人間科学の相対主義」と「自然科学の客観主義」を合わせて「構造構成主義」へ向かうといった感じだろうか。経験主義・系統主義、カントのような話かもしれない)
自分の行っていることが、学術的知識では何に何処に値するのか。これを考えられることで、エピソードに軸や土台ができ、意味や価値が増す。
その「意味」や「価値」の再現性を探ることが、「リフレクション」の役割の一つである。
ステップ3を基に、リフレクションをする前には掘り出されていなかった「意味」や「価値」に気づけたなら、それを手掛かりに「4.行為の選択肢の拡大」へと進む。
★「ステップ3」の「本質的諸相への気づき」では
・第二局面で答えたそれぞれの答えの相互関係性はどうですか?
・学校・文脈が全体としてそれにどのような影響を与えていますか?
・あなたにとって、それはそういう意味を持ちますか?
・問題は何でしょうか?
・ポジティブな発見はありますか?
引用:http://www.nakahara-lab.net/2011/10/post_1802.html
これらを通じた「ポジティブな発見」が大切なキーワードになると思います。
※「本質的な諸相への気づき」への支援
「本質的な諸相への気づき」を促すための支援として「受容、共感、誠実、具体性、対立の概括、『今、ここ』の利用、物事を明確にする支援」などがあります。
「今、ここの利用」というのが独特で分かりにくいです。私もはっきりとは分かっていないのですが、私は、自分が「今」感じること、自分が「今」思い浮かぶアイデア(目の前の人に尋ねるなど)、「今」使えるものを使うということだと捉えました。
参考:http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED266102.pdf P8
ステップ4 行為の選択肢の拡大
ステップ4の手法はいろいろある。
誰かと「リフレクション」をシェアしたり、図解して分析したり、ただひたすらに考えたり。
概要が以下。
- 学習者(リフレクションしている人)を巻き込む
- 学習者が選択肢を形づくる
- 選択肢を十分に具体的なものにする
- 能力や勇気などの観点からみて、選択肢は、十分にリアリスティック(現実に適合している)か
- 行為が何につながるのかを吟味する
- 別の場所にも適用できるように、一般化する
- 学習者が複数の選択肢の中から選択する
引用:未来を創るリフレクションの力 F・コルトハーヘン氏のリフレクション学スペシャルワークショップに参加して - Learning journey - ラーニングジャーニー | MIKA KUMAHIRA
これらをどのようにやるかは、この先考えていきたいことの一つ。
(そもそも、まだまだ「エピソード記述」書いていないのだから)
★「ステップ4」の「行為の選択肢の拡大」では
・別の選択肢としてどのようなものが考えられますか?
・それぞれの選択肢の利点と欠点は?
・次回はどのようにしようと決心しましたか?
引用:http://www.nakahara-lab.net/2011/10/post_1802.html
これらの問いを通じて、リフレクションを深めたい。
※「行為の選択肢の拡大」への支援
「行為の選択肢の拡大」を促すための支援として「これまでのスキルの全て+解決策を発見、選択する支援」などがあります。「行為」と「行為から感じたこと」についてのカウンセリングというイメージです。
参考:http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED266102.pdf P8
ステップ5 試行
ここは、ステップ1「行為」と同義になります。
これまでのステップ1~ステップ4を踏まえて、次なる「行為」へ向かうということです。
※「試行」への支援
「試行」を促すための支援として「学習プロセスを継続する支援」などがあります。
参考:http://files.eric.ed.gov/fulltext/ED266102.pdf P8
「伴走者、激励、勇気づけ、動機付け、リマインド」などなど、学習プロセスを継続する支援が「試行」を促すかと思います。
「メタ省察」
さらに一歩進んだ省察について。「メタ省察」という枠組みがある。
「メタ」とは「高次」という意味があるため、「省察」のさらに「高次」なものいうこと。要は、「リフレクション」に対する「リフレクション」ということだ。
・私は何を学びたかったのか?
・私はそのことをどのようにして学ぼうとしたのか?
・私はどのような学びの瞬間に気づいたのか?
・その瞬間、どのように学んだのか?
・何が学びを手助けしてくれて、何が学びの邪魔をしたのか?
・わたしの学び方にはどのような問題点や長所があるのか?
・私の学び方以外の方法として、どのようなものがありうるか?
・省察を終えたいま、これから先に直面するであろう学びの
・時期を乗り越えていくための方法として、どのようなものが思いつくのか?
引用:http://www.nakahara-lab.net/2011/10/post_1802.html
「リフレクション」を行う際に気をつけるべきこと
「リフレクション」は、あくまで「今後に生かす」ために行われるものだと考えられます。振り返りの重さから、自分のダメさなどに目が行ってしまって、身動きできなくなることも考えられます。
しかし、それは、あくまで「省察」によって自己を深めたからこそ見えてきたものです。
リフレクションしていく中で、「自分はなんでこんな自己中心的なのだ」と落ち込んでしまう人がいる。しかし、それはリフレクションの目指すところではない。
大切なのは、ある規範意識に照らしあわせた時に”醜い”思考や感情、欲求を持っていたとしても、最終的に自身が行動を選択できるという信念を持ち、行動の選択肢を増やしていくことである。その意味で、リフレクションには敢然性への契機が含まれているなあなんて思ったりもするのだが、その話はまたさておき、いたずらに自身を追い詰めることがリフレクションではないということも忘れないようにしたい。
引用:あるがままの記録: コルトハーヘンの「9つの質問」と陥りがちなリフレクションの罠
それこそ、その見えた「意味」や「価値」を基に、改善していけばいいのです。
リフレクションを「○○○」と言い換える
先日「授業づくりネットワーク」理事の石川晋さんの話を聞く機会がありました。
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その中で「リフレクション」っていうと何をしていいか分からないが、ある言葉に言い換えると分かりやすいかもしれないとおっしゃっていました。
以下の本にも書かれているそうですが(お前は見てないのか!まだその前の号を見ています)。
リフレクションは「見直し」とおっしゃっていました。確かに分かりやすいですね。
そう見直しなんですよね。
追記:2019/2/16
以上で、今のところの「リフレクション」の【まとめ】を終わります。
他のエピソード記述
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