ここでは「合理的配慮」について、主に「特別支援教育の在り方に関する特別委員会 合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ(以下 ワーキンググループ)※1」を参考に書いていきます。
内閣府にデータ集があります。
合理的配慮等具体例データ集(合理的配慮サーチ):障害者制度改革担当室 - 内閣府
- 1.「合理的配慮」とは
- 2.「合理的配慮等環境設備検討ワーキンググループ(報告)について」
- 3.「合理的配慮」の定義について
- 4.「基礎的環境整備」について
- 4.学校における「合理的配慮」の観点について
- 5.補足
- 6.ワーキンググループ(報告)についての指摘
1.「合理的配慮」とは
一言でいうと
「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう」
障害者の権利に関する条約 第24条(教育)より
です。
2.「合理的配慮等環境設備検討ワーキンググループ(報告)について」
障害者本人や保護者からヒアリングを行い、各障害種別による配慮事項について検討され、平成24年2月13日に(報告)が出されました。
1.「合理的配慮」の定義
2.「合理的配慮」の決定方法等について
3.基礎的環境整備について
4.学校における「合理的配慮」の観点
5.関連事項
3.「合理的配慮」の定義について
(以下の引用は、「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ 報告」を基にしています)
(1)「合理的配慮」の定義
○条約の定義に照らし、本ワーキンググループにおける「合理的配慮」とは、「障害のある子どもが、他の子どもと平等に「教育を受ける権利」を享有・行使することを確保するために、学校の設置者及び学校が必要かつ適当な変更・調整を行うことであり、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、学校教育を受ける場合に個別に必要とされるもの」であり、「学校の設置者及び学校に対して、体制面、財政面において、均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」、とする。なお、障害者の権利に関する条約において、「合理的配慮」の否定は、障害を理由とする差別に含まれるとされていることに留意する必要がある。
○「合理的配慮」の決定・提供に当たっては、各学校の設置者及び学校が体制面、財政面をも勘案し、「均衡を失した」又は「過度の」負担について、個別に判断することとなる。各学校の設置者及び学校は、障害のある子どもと障害のない子どもが共に教育を受けるというインクルーシブ教育システムの構築に向けた取組として、「合理的配慮」の提供に努める必要がある。その際、現在必要とされている「合理的配慮」は何か、何を優先して提供する必要があるかなどについて共通理解を図る必要がある。
4.「基礎的環境整備」について
1.「基礎的環境整備」とは
「基礎的環境整備」とは、「合理的配慮」の基礎となる環境整備です。
環境整備は、その整備の状況により異なるところではあるが、これらを基に、設置者及び学校が、各学校において、障害のある子どもに対し、その状況に応じて、「合理的配慮」を提供する。
2.「基礎的環境整備」の8つの項目について
(1)ネットワークの形成・連続性のある多様な学びの場の活用
(2)専門性のある指導体制の確保
(3)個別の教育支援計画や個別の指導計画の作成等による指導
(4)教材の確保
(5)施設・設備の整備
(6)専門性のある教員、支援員等の人的配置
(7)個に応じた指導や学びの場の設定等による特別な指導
(8)交流及び共同学習の推進
4.学校における「合理的配慮」の観点について
「ワーキンググループの(報告)」では3つの観点が示されている。
それぞれの障害種ごとの具体例は(別表)に示されている。
1.「合理的配慮」の観点(1)教育内容・方法
<(1)-1 教育内容>(1)-1-1 学習上又は生活上の困難を改善・克服するための配慮 (別表1)
障害による学習上又は生活上の困難を主体的に改善・克服するため、また、個性や障害の特性に応じて、その持てる力を高めるため、必要な知識、技能、態度、習慣を身に付けられるよう支援する。
(1)-1-2 学習内容の変更・調整(別表2)
認知の特性、身体の動き等に応じて、具体の学習活動の内容や量、評価の方法等を工夫する。障害の状態、発達の段階、年齢等を考慮しつつ、卒業後の生活や進路を見据えた学習内容を考慮するとともに、学習過程において人間関係を広げることや自己選択・自己判断する機会を増やすこと等に留意する。
<(1)-2 教育方法>
(1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮(別表3)
別紙2:「(1)-2-1 情報・コミュニケーション及び教材の配慮」の例:文部科学省
障害の状態等に応じた情報保障やコミュニケーションの方法について配慮するとともに、教材(ICT及び補助用具を含む)の活用について配慮する。
(1)-2-2学習機会や体験の確保(別表4)
治療のため学習空白が生じることや障害の状態により経験が不足することに対し、学習機会や体験を確保する方法を工夫する。また、障害の状態により、実施が困難な学習活動についての活動内容・方法を工夫するとともに、感覚と体験を総合的に活用できる学習活動を通じて概念形成を促進する。さらに、入学試験やその他の試験において配慮する。
(1)-2-3 心理面・健康面の配慮(別表5)
適切な人間関係を構築するため、集団におけるコミュニケーションについて配慮するとともに、他の幼児児童生徒が障害について理解を深めることができるようにする。学習に見通しが持てるようにしたり、周囲の状況を判断できるようにしたりして心理的不安を取り除く。また、健康状態により、学習内容・方法を柔軟に調整し、障害に起因した不安感や孤独感を解消し自己肯定感を高める。
学習の予定や進め方を分かりやすい方法で知らせておくことや、それを確認できるようにすることで、心理的不安を取り除くとともに、周囲の状況を判断できるようにする。
2.「合理的配慮」の観点(2)支援体制
(2)-1 専門性のある指導体制の整備(別表6)
校長がリーダーシップを発揮し、学校全体として専門性のある指導体制を確保することに努める。そのため、個別の教育支援計画や個別の指導計画を作成するなどにより、学校内外の関係者の共通理解を図るとともに、役割分担を行う。また、学習の場面等を考慮した校内の役割分担を行う。
必要に応じ、適切な人的配置(支援員等)を行うほか、学校内外の教育資源(通級による指導や特別支援学級、特別支援学校のセンター的機能、専門家チーム等による助言等)の活用や医療、福祉、労働等関係機関との連携を行う。
(2)-2 幼児児童生徒、教職員、保護者、地域の理解啓発を図るための配慮(別表7)
障害のある幼児児童生徒に関して、障害によって日常生活や学習場面において様々な困難が生じることについて周囲の幼児児童生徒の理解啓発を図る。共生の理念を涵養するため、障害のある幼児児童生徒の集団参加の方法について、障害のない幼児児童生徒が考え実践する機会や障害のある幼児児童生徒自身が障害について周囲の人に理解を広げる方法等を考え実践する機会を設定する。また、保護者、地域に対しても理解啓発を図るための活動を行う。
(2)-3 災害時等の支援体制の整備(別表8)
災害時等の対応について、障害のある幼児児童生徒の状態を考慮し、危機の予測、避難方法、災害時の人的体制等、災害時体制マニュアルを整備する。また、災害時等における対応が十分にできるよう、避難訓練等の取組に当たっては、一人一人の障害の状態等を考慮する。
3.「合理的配慮」の観点(3)施設・設備
(3)-1 校内環境のバリアフリー化(別表9)
障害のある幼児児童生徒が安全かつ円滑に学校生活を送ることができるよう、障害の状態等に応じた環境にするために、スロープや手すり、便所、出入口、エレベーター等について施設の整備を計画する際に配慮する。また、既存の学校施設のバリアフリー化についても、障害のある幼児児童生徒の在籍状況等を踏まえ、学校施設に関する合理的な整備計画を策定し、計画的にバリアフリー化を推進できるよう配慮する。
(3)-2 発達、障害の状態及び特性等に応じた指導ができる施設・設備の配慮(別表10)
幼児児童生徒一人一人が障害の状態等に応じ、十分に学習に取り組めるよう、必要に応じて様々な教育機器等の導入や施設の整備を行う。また、一人一人の障害の状態、障害の特性、認知特性、体の動き、感覚等に応じて、その持てる能力を最大限活用して自主的、自発的に学習や生活ができるよう、各教室等の施設・設備について、分かりやすさ等に配慮を行うとともに、日照、室温、音の影響等に配慮する。さらに、心のケアを必要とする幼児児童生徒への配慮を行う。
(3)-3 災害時等への対応に必要な施設・設備の配慮(別表11)
災害時等への対応のため、障害の状態等に応じた施設・設備を整備する。
5.補足
1.※1「合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループ」とは
特別支援教育の在り方に関する特別委員会(以下 特別委員会)(第10回)において設置が検討されました。
平成23年5月27日「合理的配慮等環境設備検討ワーキンググループ(以下 ワーキンググループ)」(第1回)が行われました。
1 検討事項
(1)合理的配慮について(障害種別(視覚障害,聴覚障害,病弱,肢体不自由,知的障害及び発達障害)並びにこれら障害種に共通する事項)
(2)その他の環境整備について
資料1:合理的配慮等環境整備検討ワーキンググループの設置について:文部科学省
ワーキンググループ(第1回)参考資料より
平成24年1月13日(第8回)まで行われました。
2.「基礎的環境整備」「学校における3つの観点」になるまでの流れ
・ワーキンググループ(第5回)
「基礎的環境整備」と「学校における3つの観点」は合わせて「学校における配慮事項について(共通事項)」と呼ばれていました。
「学校における配慮事項等について(共通事項)(案)」には、障害種を越えた「環境整備」や「合理的配慮」について書かれています。
・ワーキンググループ(第6回)
「環境整備」と「個別の合理的配慮」を合わせて「学校における配慮事項」と呼ぶという話が出ています。
「環境整備」と「合理的配慮」はどこで線引きができるのだろうという話もされ、両方面から支援を考えるといったグレーゾーンが出てしまうむずかしさがあると意見が出ています。
また、「環境整備」前提とし、「配慮の観点」を踏まえて「配慮事項」が提供されるべきだという意見が出ています。
これらの言葉は、以下のように移り変わっていきました。
「環境整備」→「基礎的環境整備」
「配慮の観点」→「学校における3つの観点」
「配慮事項」→「別表」というイメージです。
・ワーキンググループ(第7回)
「環境整備」が「共通的環境整備」に、「個別の合理的配慮」が「合理的配慮」という呼び名になった話が出てきます。
国・都道府県・市町村は共通的な教育環境の整備をそれぞれ行っている。これらを「共通的環境整備」と呼んではどうかという話がでました。
そして、それを前提として、設置者や学校が個々の障害のある子どもに対して提供するのが合理的配慮であるとしています。
また、合理的配慮については、個別の状況に応じて提供されるもので、具体的かつ網羅的に記述することは困難ということで、これまで御議論いただきましたように、合理的配慮の観点として、1教育内容・方法、2支援体制、3施設設備について、列挙・累計化した上で、具体的配慮を例示するという構成で整理されています。
「共通的環境整備」が権利条約の合理的配慮には含まれないかもしれない。もしくは、環境整備の部分も権利条約の合理的配慮と言えるのではないかという問いもあります。
ちなみにこの回では「可能な限り」や「過度な負担」についても意見が交わされています。
・ワーキンググループ(第8回)で、「共通的環境整備」は「基礎的環境整備」と呼ばれるようになりました。
前回、個別に提供されるのが「合理的配慮」で、みんなに提供されるのが「共通的環境整備」という整理がありました。その中で、「共通的」という言葉がつくと「一律に用意される」と思われる懸念があるということから「合理的配慮の基礎となる環境整備」という意味で「基礎的環境整備」と呼び変えることが提案された。
「合理的配慮」の「例示」については「別表」で示す旨も話されています。
3.「特別支援教育の在り方についての特別委員会」における「合理的配慮」についての議論
「特別支援教育の在り方についての特別委員会」で議論されたのは、(第3回)です。ここで「合理的配慮について」の資料が出され、話し合われました。(第4回)には補足が出されています。
特別支援教育の在り方に関する特別委員会(第3回) 議事録:文部科学省
4.「論点整理」の資料
○1 障害者の権利に関する条約第24条は、「個人に必要とされる合理的配慮が提供されること。」と規定している。同条約第2条によれば、「合理的配慮」とは、「障害者が他の者と平等にすべての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整」であり、「特定の場合において必要とされるもの」であり、かつ、その「変更及び調整」を行う主体にとっての負担という観点から、「均衡を失した又は過度の負担を課さないもの」をいう、とされている。
これは、特別委員会(第5回)までに出た合理的配慮についての意見のまとめのようなもの
参考資料19:合理的配慮についての特別委員会における意見等:文部科学省
6.ワーキンググループ(報告)についての指摘
ワーキンググループ(報告)が出された後、 第37回障害者制度改革推進会議差別禁止部会(第12回)において、(報告)に関する意見交換がありました。
合理的配慮における必要な視点がまた得られるものだと思います。
リンクを貼っておきます。
また、第37回に資料で配られた質問です。
http://www8.cao.go.jp/shougai/suishin/kaikaku/s_kaigi/b_12/pdf/o-s1.pdf