インクルーシブ教育について、理解を深めるために必要な用語を集めてみました。
- 1.ノーマライゼーション
- 2.エクスクルージョン
- 4.インテグレーション(統合教育)
- 5.メインストリーミング
- 6.国際障害分類(ICIDH)
- 7.国際生活機能分類(ICF)
- 8.「医学モデル」と「社会モデル」
- 9.リハビリテーション
1.ノーマライゼーション
「障害者にも健常者と同等のノーマルの暮らしを」という思想。
1950年にデンマークの社会省の社会福祉行政官バンク・ミケルセンが唱えたと言われている。
ノーマライゼーションの「育ての父」と言われるのが、スウェーデンのニイリエ。ニイリエはノーマライゼーションを「社会の主流となっている規範やパターンに可能な限り近接するような日常生活のパターンや条件を知的障害者に可能にすること」と定義した。
ノーマライゼーションの理念は、
(1) 普通の人々と同じ条件、同じ機会を与えられた生活を営むこと。
(2) 信頼できる個人的サービスを受け、安全な環境の中で生活を営むこと。
(3) 自分の好む地域に居住することができること。
(4) 自分に適した職業を選択できること。
(5) 満足できる余暇活動が営まれること。
そして、具体的には
1 ノーマルな一日のリズム。
2 ノーマルな一週間の課業(平日と休日の区別をつけた)。
3 ノーマルな一年のリズム(季節の変化に応じた課業)。
4 ノーマルな生活リズム(友人・同僚とのノーマルな接触)。
5 差別のない取り扱い。
6 異性との接触。
7 ノーマルな経済水準。
8 居住地域内のノーマルな住居水準の確保。
この理念により、社会的な問題として扱われるようになった。
参考:
2.エクスクルージョン
日本語訳は「排除」という意味。
1960年代、ヨーロッパで障害児収容施設から特殊教育諸学校への以降が本格化するなど、国際的に見て「分離型」の特殊教育が盛んな時代となった。
「分離型」を「エクスクルージョン」と捉えることもできる。
1960年代は、同時に「統合教育」もはじまった時代。
参考:障害者の教育と生涯発達支援[改訂版]2011,梅永,島田
3.ソーシャル・エクスクルージョン
日本語訳は「社会的排除」です。
国などが障害者を排除しないシステムや環境を作ったとしても、そこにいる社会・人々がシステムを使って環境が生かされなければ、障害者は結局排除されてしまいます。「人々による社会的な排除」を「ソーシャル・エクスクルージョン」と言います。
「ソーシャルエクスクルージョン」と反対の意味を持つ「ソーシャルインクルージョン」の説明を見ると、理解しやすいと思います。
以下の話は、ノーマライゼーションの先にソーシャルインクルージョンがあるのではなく、ノーマライゼーションとソーシャルインクルージョンはそもそも違った視点のものだから、ソーシャルインクルージョンの文脈が必要という流れから話されたものです。
ノーマライゼーションとソーシャル・インクルージョンの違いというのは、私は三つあると理解しています。
一つは、今のように排除に対抗する動的な動き、その人たちが社会から弾き飛ばされないように社会に入れていく、それが一つ。
二番目には、あくまでソーシャル・インクルージョンというのは一つの面、町の中での動きであるというのが二つ目です。
三つ目は、そこにいる人たち、住民の方々、それは障害者の方々も含めて住民がすべて参加をしてやっていく。これがソーシャル・インクルージョンの要素、三つの重要な要素ではないかなと思っています。
4.インテグレーション(統合教育)
日本語訳は「統合」である。
もともと2つに分けられていたものを1つに統合することがインテグレーション。
「通常の学級」と「養護学校や支援級」と限られた時間において交流をさせる制度。
障害のない子どもに障害児に対する恐怖心を減らし、障害児に対する理解と友情を深めようという、ノーマライゼーションの初歩段階の役目とも言える。
参考:障害者の教育と生涯発達支援[改訂版]2011,梅永,島田
また、
「インテグレーション=統合」には以下の3つのレベルがあると言われる。
○位置的統合:養護学校や特殊学級など、主に障害者から成る学校や学級を通常の小・中・高と同一敷地内か隣接した地域に設置する。
○社会的統合:養護学校や特殊学級に籍を置き、基本的には学ぶ環境は別々とするが、一部の教科や課外活動・行事等において健常児と共に学習したり参加したりできる機会を積極的に設ける。
○機会的統合:通常学級に在籍し、基本的には終日そして毎日、学習や諸活動に参加することとする。
引用:http://www.tufs.ac.jp/education/yushuronbun/doc/yusyu24_07.pdf
5.メインストリーミング
主にアメリカで使われた言葉で、日本でいうところの通級のシステム。通常の学級から、個人や少人数で授業を受ける場に取り出して指導する制度のこと。
インクルージョンとの違いは、通常級にいる時間内には、通級では得られる配慮などの支援が受けられない点。
参考:障害者の教育と生涯発達支援[改訂版]2011,梅永,島田
障害者の残存機能を最大限に生かし、障害のない同世代の仲間と可能な限り一緒に学び、成長する事が双方の人格形成にとって大切であるという考え方
通常の学級にいる間は支援を受けられないため、 支援もなく物理的に地域社会に出すだけということで「投げ捨てる」という意味の単語を用いて「ダンピング」という批判もあった。
参考:http://www.tufs.ac.jp/education/yushuronbun/doc/yusyu24_07.pdf
6.国際障害分類(ICIDH)
ICIDHのモデルは図1に示すとおりで、疾患・変調が原因となって機能・形態障害が起こり、それから能力障害が生じ、それが社会的不利を起こすというものである。
そのほか図1には一種の「バイパス」として機能・形態障害から直接に社会的不利が生じる経路が示されているが、これはたとえば顔面のあざのような形態障害が、能力障害がないにもかかわらず、社会的不利を起こしうるといった場合であると序論では述べられている。この他たとえば脳性マヒや脳卒中片マヒなどでの歩容異常(機能障害)が、歩行の実用性には問題がない(能力障害はない)にもかかわらず社会的不利を引き起こしうる等、さまざまな例が考えられる。
このモデルは障害を機能・形態障害、能力障害、社会的不利の三つのレベルに分けて捉えるという、「障害の階層性」を示した点で画期的なものであった。
7.国際生活機能分類(ICF)
ICF(International Classification of Functioning, Disability and Health)は、人間の生活機能と障害の分類法として、2001年5月、世界保健機関(WHO)総会において採択された。この特徴は、これまでのWHO国際障害分類(ICIDH)がマイナス面を分類するという考え方が中心であったのに対し、ICFは、生活機能というプラス面からみるように視点を転換し、さらに環境因子等の観点を加えたことである。
8.「医学モデル」と「社会モデル」
5-2. 医学モデルと社会モデル
障害と生活機能の理解と説明のために,さまざまな概念モデルが提案されてきた。それらは「医学モデル」対「社会モデル」という弁証法で表現されうる。
医学モデルでは,障害という現象を個人の問題としてとらえ,病気・外傷やその他の健康状態から直接的に生じるものであり,専門職による個別的な治療というかたちでの医療を必要とするものとみる。
障害への対処は,治癒あるいは個人のよりよい適応と行動変容を目標になされる。
主な課題は医療であり,政治的なレベルでは,保健ケア政策の修正や改革が主要な対応となる。
社会モデルでは障害を主として社会によって作られた問題とみなし,基本的に障害のある人の社会への完全な統合の問題としてみる。
障害は個人に帰属するものではなく,諸状態の集合体であり,その多くが社会環境によって作り出されたものであるとされる。
したがって,この問題に取り組むには社会的行動が求められ,障害のある人の社会生活の全分野への完全参加に必要な環境の変更を社会全体の共同責任とする。したがって,問題なのは社会変化を求める態度上または思想上の課題であり,政治的なレベルにおいては人権問題とされる。このモデルでは,障害は政治的問題となる。
ICFはこれらの2つの対立するモデルの統合に基づいている。生活機能のさまざまな観点の統合をはかる上で,「生物・心理・社会的」アプローチを用いる。したがってICFが意図しているのは,1つの統合を成し遂げ,それによって生物学的,個人的,社会的観点における,健康に関する異なる観点の首尾一貫した見方を提供することである。
9.リハビリテーション
辞書には、復権、社会復帰等の記載があります。
WHO(世界保健機構)はリハビリテーションを「能力低下やその状態を改善し、障がい者の社会的統合を達成するためのあらゆる手段を含んでいる。
リハビリテーションは障がい者が環境に適応するための訓練を行うばかりでなく、障がい者の社会的統合を促す全体として環境や社会に手を加えることも目的とする。
そして、障がい者自身・家族・そして彼らの住んでいる地域社会がリハビリテーションに関するサービスの計画と実行に関わり合わなければならない。」と定義しています。
(その1)終わり