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インクルーシブ教育とは#2(障害者の権利に関する条約)

インクルーシブ教育とは#1(サラマンカ声明)

inclusive.hatenablog.jp

 の続きです。

 

今回は「障害者の権利に関する条約」についてです。

障害者の権利に関する条約」を一言で言うと、障害者の人権や自由を守るためのものです。

これまで、守られてこなかった現状があるからこそ、できたものです。

 http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000069541.pdf

 障害者の権利に関する条約 パンフレット(わかりやすい版)

作成にあたっては

私たちのことを、私たち抜きに決めないで

という考え方が大切にされました。本当に障害者のためになる条約を作るためです。

 

1.締結までの流れ

1981年の国際障害者年の頃から、差別がなくならない現状から、条約整備への働きかけがありました。しかし、意識はなかなか変わりませんでした。

2001年に、当時のメキシコ大統領が「条約をつくるべきだ」と唱えたのをきっかけに、実現に向けて動き出しました。

2006年12月13日に「障害者の権利に関する条約」が国連本会議で採択されました。

日本は、

2007年9月に条約に署名しました。

署名というのは、今後批准できるようにがんばりますという表明です。

2009年に批准の動きがありましたが、「待った」がかかったそうです。理由は、批准しても条約の効力が発揮されるか不確かだったためです。

そこから、「障害者制度改革推進本部」などが設置され、条約の法整備が進みました。

2011年 「障害者基本法」改正

2012年 「障害者福祉支援法」

2013年 「障害者差別解消法」

そして

2014年1月20日 「障害者の権利に関する条約」締結

となりました。

2.内容について

1.障害の「社会モデル」

「障害者の権利に関する条約」では、障害の「社会モデル」の考え方が反映されています。これまでは、「医学モデル」の考え方が主流でした。

医学モデル」とは、障害は病気や外傷などから生じる個人の問題であり、医療を必要とするという考え方です。

社会モデル」とは、障害は主に社会によって作られた障害者の社会への統合の問題であるという考え方です。

現在では、医療や支援に関するニーズと社会的障壁の双方に取り組む必要があると認識されています。

 

以下は具体的な内容に触れる。

 

2.第一条 目的

目的は、上にも少し書きましたが

 「全ての障害者によるあらゆつ人権及び基本的自由の完全かつ平等な享有を促進し、保護し、確保すること並びに障害者の固有の尊厳の尊重を促進すること」

http://www.mofa.go.jp/mofaj/files/000069541.pdf

 障害者の権利に関する条約 パンフレット(わかりやすい版)より

 

3.第二条 定義

障害に基づく差別」とは、障害に基づくあらゆる区別、排除又は制限であって、政治的、経済的、社会的、文化的、市民的その他のあらゆる分野において、他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を認識し、享有し、又は行使することを害し、又は妨げる目的又は効果を有するものをいう。障害に基づく差別には、あらゆる形態の差別(合理的配慮の否定を含む。)を含む。
 「合理的配慮」とは、障害者が他の者との平等を基礎として全ての人権及び基本的自由を享有し、又は行使することを確保するための必要かつ適当な変更及び調整であって、特定の場合において必要とされるものであり、かつ、均衡を失した又は過度の負担を課さないものをいう。
 「ユニバーサルデザイン」とは、調整又は特別な設計を必要とすることなく、最大限可能な範囲で全ての人が使用することのできる製品、環境、計画及びサービスの設計をいう。ユニバーサルデザインは、特定の障害者の集団のための補装具が必要な場合には、これを排除するものではない。

「権利条約」より

「合理的配慮」は、これからのキーワードになっていくと思います。

私は、"他の者との平等"というワードが気になり、調べたのでそれも今度書きます。

 

4.第五条 平等及び無差別

 3 締約国は、平等を促進し、及び差別を撤廃することを目的として、合理的配慮が提供されることを確保するための全ての適当な措置をとる。

「権利条約」より 

「合理的配慮」が提供できるように国が動くことがここに記されています。

 

5.第二十四条 教育

 1 締約国は、教育についての障害者の権利を認める。締約国は、この権利を差別なしに、かつ、機会の均等を基礎として実現するため、障害者を包容するあらゆる段階の教育制度(inclusive education system)及び生涯学習を確保する。当該教育制度及び生涯学習は、次のことを目的とする。

(a) 人間の潜在能力並びに尊厳及び自己の価値についての意識を十分に発達させ、並びに人権、基本的自由及び人間の多様性の尊重を強化すること。

(b) 障害者が、その人格、才能及び創造力並びに精神的及び身体的な能力をその可能な最大限度まで発達させること。

(c) 障害者が自由な社会に効果的に参加することを可能とすること。

 

2 締約国は、1の権利の実現に当たり、次のことを確保する。

(a) 障害者が障害に基づいて一般的な教育制度から排除されないこと及び障害のある児童が障害に基づいて無償のかつ義務的な初等教育から又は中等教育から排除されないこと

(b) 障害者が、他の者との平等を基礎として、自己の生活する地域社会において、障害者を包容し、質が高く、かつ、無償の初等教育を享受することができること及び中等教育を享受することができること

(c) 個人に必要とされる合理的配慮が提供されること

(d) 障害者が、その効果的な教育を容易にするために必要な支援を一般的な教育制度の下で受けること

(e) 学問的及び社会的な発達を最大にする環境において、完全な包容という目標に合致する効果的で個別化された支援措置がとられること

 

3 締約国は、障害者が教育に完全かつ平等に参加し、及び地域社会の構成員として完全かつ平等に参加することを容易にするため、障害者が生活する上での技能及び社会的な発達のための技能を習得することを可能とする。このため、締約国は、次のことを含む適当な措置をとる。

(a) 点字、代替的な文字、意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式並びに定位及び移動のための技能の習得並びに障害者相互による支援及び助言を容易にすること。

(b) 手話の習得及び(ろう)社会の言語的な同一性の促進を容易にすること。

(c) 盲人、(ろう)者又は盲(ろう)者(特に盲人、(ろう)者又は盲(ろう)者である児童)の教育が、その個人にとって最も適当な言語並びに意思疎通の形態及び手段で、かつ、学問的及び社会的な発達を最大にする環境において行われることを確保すること。

 

4 締約国は、1の権利の実現の確保を助長することを目的として、手話又は点字について能力を有する教員(障害のある教員を含む。)を雇用し、並びに教育に従事する専門家及び職員(教育のいずれの段階において従事するかを問わない。)に対する研修を行うための適当な措置をとる。この研修には、障害についての意識の向上を組み入れ、また、適当な意思疎通の補助的及び代替的な形態、手段及び様式の使用並びに障害者を支援するための教育技法及び教材の使用を組み入れるものとする。

 

5 締約国は、障害者が、差別なしに、かつ、他の者との平等を基礎として、一般的な高等教育、職業訓練、成人教育及び生涯学習を享受することができることを確保する。このため、締約国は、合理的配慮が障害者に提供されることを確保する

 「権利条約」より

 太字になっている所は、「インクルーシブ教育」にかかわる部分です。

第二十四条の1にある「障害者を包容するあらゆる段階の教育制度(inclusive education system at all  levels)」という言葉があります。かっこで英文を入れましたが、条約の英文には、「インクルーシブ教育システム」と書かれています。ここから、「インクルーシブ教育システム」という言葉や概念が広まっていきました。

そしてもう一つ気にしてほしいワードとして「完全な包容」があります。

アメリカなどで使われている言葉の中に「フルインクルージョン」というのがあります。それについては、また別で触れます。

 

また、「第二十七条 労働及び雇用」にも、「第二十四条 教育」と同様に、合理的配慮の提供について記されています。

 

この条約は、障害者について考えるための大切な義務の一つです。

条約を踏まえて、子どもたちを見つめることで、共生社会の実現を目指すためにどんな力が必要か、どんな環境が必要かを考える手がかりとなります。 

よりよい未来を目指して。